第5回講座は今日的課題である、「現在の雇用・労働政策」をテーマに、野川忍・東京学芸大学教授から、「雇用・労働政策の課題と展望」と題して講義を受けました。
 野川教授は、冒頭、雇用の原理について、「雇用関係は契約関係」であり、「すべて合意のもとに決まる」のが原則としたうえで、歴史的に見ても市場経済では労働者に不利になり、「労働契約には市場メカニズムが働かない」ことから、新たに「労働契約法」が 施行されたことを強調しました。
また、野川教授は、雇用、労働政策が「第3次産業の隆盛をはじめ雇用形態の多様化、さらに労使関係の衰退」により、80年代から21世紀にかけて大きく変容してきた事を指摘するとともに、日本だけが「労使関係が衰退している」事を指摘しました。そして、先進国での労働組合の役割と任務に比べ、日本では労働組合が弱くなりすぎたため格差社会が広がってきている側面もあることを指摘し、格差社会是正のためにも、労働組合をもっと強くすることが課題であることを繰り返し強調しました。
 さらに、野川教授は、国際化と情報化が雇用政策に影響を与えており、そうした意味でも「労働契約法の成立」は第3の基本法として、重要な意味を持っていることを訴えました。
 最後に、雇用、労働政策の現状と課題として、@非正規労働者への対応とワークライフバランスA労働市場の活性化と格差是正へのとりくみB労働契約法の出現と労働法の構造転換―などを挙げるとともに、今後の展望としてドイツでの取り組みの例を引きながら、「第1市場から第2市場への移動を余儀なくされた労働者がさらに失業に移行することを阻止し、再び第1市場へ復帰させるために住宅、交通、光熱など生活ベーシックの手当てなど、大掛かりなグランドデザインが必要とされている」事を訴えました。